香川のうどん5杯


編集チーフHです



先月末、うどんを食べに香川まで行ってきました。
四国上陸はおよそ十年ぶり。四万十川流域で1カ月にわたる取材を行って以来です。


当時、僕はCM制作会社にいて、ある食品の〝人生が見える食べ方〟という企画を担当。
プロデューサーの「よしH、明日から高知で、とりあえず3日分の着替えを持って
〝川と生きる漁師を探しました。結局1カ月になったから服も体もやつれたけど……
仙人のような老漁師に出会えたし、うなぎやゴリの漁にも連れて行ってもらったし。
これって、なかなか貴重な経験ですよね


思い出話はさておき、空港到着後、ガイドブックに書かれた〝看板もない〟という
タイトルに惹かれて、まずは三嶋製麺所に向かいました


ここは川沿いの小さな集落の中にあり、頼みのカーナビもうまく表示せず、道は細く、
近づいても「次を右折」などの案内は皆無。そんな、初心者を拒むロケーションだから
ょっとした冒険気分になり『絶対に食べたい!と、テンションが上がります


三嶋製麺所のメニューは、小または大を選び、それを冷たく食べるか、温かく食べるか。
味付けもネギ、七味、しょうゆ、味の素などで自分好みに整えるスタイルです。
す、すごい! ローカルな讃岐うどんって、こんなにシンプルなんですね!





で、僕は「小・温」を注文。
おすすめは「釜たま」らしいですが
うどんトリップはまだ始まったばかり。
満腹になってはいかん、と
さっぱりいただくことにしました。
ちなみにマイ箸持参で、たまご無料とか。



てきぱきと働く、おばあちゃんの艶やかな一杯





よく「うどんはコシが命」と聞きますが、
こちらの麺は噛んでもあまり抵抗がなく、
つるつると上品な舌ざわりが印象的です。
続々とやって来るお客さんにあせり
しょうゆをかけ過ぎたことが残念ですが、
舌の上を滑っていく、あの感覚……。
上々のデビュー戦になりました。





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次は〝うどんマップ〟のはずれにありながら、行列ができると評判の「谷川米穀店」。
並ぶこと約1時間だったのに対し、うどんを味わっていたのはわずか3分……。
ガイドブックには〝うどんのテーマパーク〟なんて紹介されていましたが、
なかなかうまい表現ですね
長く待つので『自分は、並ぶまでしてうどんが好きなのか?』と
自問自答してしまいます
列に並んでいると、クリアファイルに入った「味付けの仕方」が回覧されてきました。
説明によれば、調味料はネギ、しょうゆ、酢、赤唐辛子、青唐辛子の佃煮、味の素。
赤字でしっかり「しょうゆはほんの少し垂らす程度」と書いてあります。今度は注意。

入口では、若い店員さんがはにかみ目線です

いずれも入れすぎ注意の調味料たち
食べ方は、ネギを乗せて、しょうゆを垂らし、好みで酢や唐辛子類を入れます。
店から出てくる何人かがヒーヒー言ってたので、唐辛子類には気を付けた方がよさそう。

酢と青唐辛子で味付けするからか、沖縄料理のテイストを思わせます。
ああ、辛くておいしい。すっぱくておいしい。そして麺が口の中で踊ります。
三嶋製麺所が〝つるつる〟なら、こっちは〝つるぷり〟でしょうか。
でも、並んでいる人のために急がなきゃ。あ、唐辛子入れ過ぎちゃった。激辛っす。

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続いては「手打うどん松岡」です。
さっきから食べ続けているのでなんですが、イメージ的にはランチのつもりだったかも。




今までの2軒では、浮き足だっていたので
店内を見渡す余裕がありませんでしたが、
こちらはタイミング良く常連客1人だけ。
おかずとして、おでんや天ぷらなんかが
置いてある店も多いようですね。








これまでシンプルに食べてきたので
思い切って天ぷらに挑戦してみました。
関東では珍しい「赤天」なるものが
あったけど、ちくわをチョイス。



このちくわを、うどんの上に乗せるべきか、いや、このままかぶりつくべきか……
最後まで葛藤しながらいただきました。結局「俺のダシに油が浮いてるぞ!」とか、
ご主人に怒られるかもしれないので、乗せないことにしましたけど。合ってます?
注文したのは「かけ」。松岡の麺は歯ごたえがあり、強いコシを感じました。
ぷりぷり、ぷりぷりと、よく噛むからおなかいっぱいにダシを口に含めば
『あ、これがイリコなんだ』と、落ち着いた気分になれますよ。

ノスタルジックな厨房。釜や鍋から立つ湯気に
ご主人と奥さん、息子さんが目を細めながら、
一杯のもてなしに集中しています


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こんぴらさんでのんびり腹ごなしの後、夕飯前にもう一軒。
向かったのは「橋本製麺」です。
窓の外、夕日を浴びる讃岐富士に『遠い所まで来たなぁ』って、しみじみ。
客は、まず80歳くらいのおばあちゃんがスーパーの袋を手にやってきて、
次に車で乗り付けたパンクファッションの女子。それと、観光客の僕らです。
何だかまったく統一感がなくて、面白かった。この店はもちろん、香川では
うどんそのものが、年齢を問わずに愛されているんだなーと、実感した瞬間でした。

若大将のたくましい指でほぐされて、
麺はさらに旨くなる……

結論、やっぱり讃岐うどんは釜たま」が旨し!!

うどんの白、ネギの緑、かつおぶしの茶、潰された鮮やかな黄身。色合いといい、
バランスといい、食欲をそそる美しさですよね。つるつるのうどんと、たまごの潤いで、
摩擦ゼロでかき込めます加えて、こんもりした讃岐富士のように、黄身が生むまろやかな
風味。麺には、若大将の太い腕と優しい人柄を感じさせる、心地よい弾力がありました。

さすがに夕食は、うどんをギブアップ。
地元の居酒屋に入り、名物の「骨付き鶏」や瀬戸内の魚、地酒を堪能しました!


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でも翌朝は……ストイックに、またもやうどん。ラストの1軒は「こんぴらや」です。

おそらく家族経営と思われる今までの店に対し、こちらはチェーン店で高松駅前だからか
アルバイトの女子が頑張っていました。
もちろん、それでも僕にとっては文句なし。
昔から、こうしてレモンやらすだちやらをかける食べ方に憧れていたので、
最後の一杯は冷たいうどんを選択。温かい麺に比べ、かなりコシが強くなりますね。


昨日の釜たまも絶品でしたが、看板にもあるように、この店は「温玉ぶっかけ」が
おすすめのようです。讃岐うどんとたまごって、とても親しい関係なんですね。



以上、香川初心者が選んだうどん5杯。皆さん、ごちそうさまでした。
ちなみに松山と合わせ、滞在中に7種類の地酒を楽しみました。あー、旅っていいですね。

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